「多様性」という言葉、よく聞きます。一人一人違うのだから、多様性なんですけど。私たちが理解しておくことは大事ですね。

1.身体的多様性への対応

身体的障害や特別な健康管理を必要とする子どもたちが安心して参加できるようにすることが重要です。車椅子利用者のためのバリアフリーな施設や、アレルギー対応の食事を提供するなどの対策が必要です。

  • バリアフリー施設の確保: 車椅子対応のトイレや、アクセスしやすい通路を用意する。事前に活動場所のバリアフリー状況を確認する。
  • 医療サポート: キャンプナースを配置し、必要な医療対応が迅速に行えるようにする。アレルギーや持病に関する情報を事前に収集し対策を準備する。

2. 発達的多様性への対応

発達障害の有無にかかわらず、得意なことや不得意なことはみんなバラバラです。子どもたちが活動に参加しやすいように、予測可能なスケジュールや視覚的な指示を用意しておきます。また、感覚過敏を持つ子どものために静かな休憩スペースを提供することも有効です。

  • 予測可能なスケジュール: 活動のスケジュールを事前に共有し、視覚的に分かりやすく提示する。予測可能な日課を設定する。変更がある場合は、きちんと説明をすること。
  • 静かな休憩スペースの提供: 感覚過敏の子どもがリラックスできる静かな場所を準備しておく(救護室)。

3. 言語的多様性への対応

多言語が話される環境では、必要に応じて通訳や翻訳サービスを提供することが重要です。視覚的な指示やシンプルな言葉での説明も効果的です。

  • 通訳・翻訳サービス: 必要に応じて多言語対応のスタッフを配置し、重要な情報は複数の言語で提供する。
  • 視覚的指示: 言語が異なる子どもにも分かりやすいように、絵や図を活用する。

4. ジェンダーの多様性への対応

ジェンダーに関わらず参加できるアクティビティや施設を整備することが求められます。例えば、ユニセックスのトイレや更衣室を用意することなどです。

  • ユニセックストイレの設置: 男女別のトイレに加え、ユニセックスのトイレを設置を確認しておく。
  • ジェンダーフリーなアクティビティ: ジェンダーに関係なく参加できるアクティビティを企画し、全員が楽しめる環境を整える。入浴やシャワー室は、家族や本人の意向を聞いておく。

5. 経済的多様性への対応

子どもが「野外活動に参加」を希望しているにもかかわらず、経済的な理由で参加を断念しないよう、助成金の提供、必要な装備の貸し出しなどの支援を検討しておく。

  • 助成金の提供: 経済的に困難な家庭の子どもに対して、参加費を軽減するための助成金を提供や分割払いなどの検討。
  • 装備の貸し出し: 必要な装備や衣類を貸し出すサービスを提供し、経済的負担を軽減する。
  • 呼びかけ:「経済的な理由で野外活動に参加できない子どもを支援するプロジェクト」お金の支援、物の支援などを呼びかける。

6. 心理的安全性の確保

すべての子どもが心理的に安全で安心して過ごせる環境を提供することが重要です。いじめや差別、メンタルヘルスサポートに速やかに対応していく環境をつくります。いじめや差別を「学び」へと変換できる対応が重要であり、「何も起こらないこと」が良いとは限りません。

  • 「いじめ」の認識の違いを知る: いじめや差別的な発言や行動があった場合、誰かを犯人にしたり、誰かをみんなで守るのではなく、全員が納得できる環境を子どもたちとともに話し合う。
  • メンタルヘルスサポート: キャンプナースを配置し、ゆっくりと話を聴くなどのサポートをおこなう。野外活動中に生じたトラブルが、野外活動によって引き起こされたものではなく、家庭や学校などで抱えていた問題が顕在化することがある。

7. 興味や能力の多様性への対応

子どもたちの興味や才能はさまざまです。多様なアクティビティを提供し、子どもたちが自分のペースで活動に参加できるようにします。スポーツ、アート、音楽、ダンス、ゲームなど、多様な選択肢があったり、集団行動において活躍の場面が違ったりすることを見守ります。

  • 多様なアクティビティの提供: さまざまなアクティビティを用意し、子どもたちの興味に応じた選択肢を準備する。
  • 自己表現の機会: 子どもたちが自分の興味や才能を発揮できるような自己表現の機会を設ける。

8. 家庭環境の多様性への対応

経済的状況・家族構成(片親家庭、養子縁組家庭、再婚家庭、多世代同居家庭など)、親の職業と勤務時間、教育レベルと価値観、言語と文化、健康状態(家庭に慢性的な病気や障害を持つメンバーがいる場合、子どもがそのケアを手伝う必要があるなど)、親の精神的・感情的健康(保護者がストレスや精神的な問題を抱えている場合)など

  • 保護者との連絡: 参加前や活動中に保護者との連絡を密にし、子どもたちの状況や必要なサポートを共有する。
  • 相談窓口の設置: 保護者が安心して子どもを預けられるよう、相談窓口を設置し対応を行う。

9. 文化的・宗教的背景への対応

子どもたちはさまざまな文化的背景を持っており、宗教的な習慣や儀式も異なります。これを尊重し、活動の中で文化的・宗教的な配慮をすることが重要です。例として、食事の選択肢にハラルやベジタリアンメニューを含めることや、祈りの時間を確保することがあります。

  • 食事の提供: ハラルやベジタリアン、アレルギー対応の食事を準備する。参加前に食事に関するアンケートを実施し、必要な配慮を確認する。
  • 宗教的儀式の尊重: 祈りの時間や礼拝スペースを確保する。スケジュールに宗教的な配慮を組み込む。

投稿者プロフィール

児玉善子(看護師)
児玉善子(看護師)
一般社団法人看護教育支援協会 代表理事